神秘に包まれた馬祖列島~台湾の最北端は海も砂浜も光る?
2016/10/19
台湾の最北端は富貴角という岬ですが、離島を含めると本当の最北端は馬祖列島です。
台湾人でさえ行ったことのある人は少ないという離島の中の離島ですが、青い光に包まれた神秘の島なのです。
馬祖列島は中国福建省の福州沖合いにありますが台湾(中華民国)政府が統治しており、名目上は列島全域で中華民国福建省連江県を構成しています。
台湾本島からは飛行機で一時間、船で一晩の距離です。飛行機は台北から一日五便出ていますが席が少なくチケットを取りにくいため船で行くことをお勧めします。
それでは船旅の始まりです。船は基隆駅すぐそばの港から出ています。
一番安いベッドで片道1000元(約3300円)。国内線ですが外国人は身分証の代わりにパスポートが必要ですので忘れず持ってきてください。
夜十一時ごろ出航とかなり遅いので近くの廟口夜市で夕食を済ませ、夜食まで買っておいた方が良さそうです。
汽笛が鳴り響きました。台湾と馬祖列島を結ぶ貨客船台馬輪いよいよ出航です。
屋上に上がって満点の星空を眺めながら夜食のちまきを食べようと竹の皮の包みを開ける、これ以上無いほどの旅情です。
朝になると突然船内放送で、
「馬~~~~~~祖~~~~~ 海的家郷~~~~」
という歌が聞こえてきます。いよいよ到着です。歌が聞こえてきたらまずは甲板に出てみてください。朝日に照らされて輝くこの島こそが馬祖列島最大の島、南竿島です。
港に近づくと、
「枕戈待旦」
というスローガンが見えてきます。
「戈(ほこ)に枕して旦(あさ)を待て。」=常に敵軍に備えよ
という意味です。かつて馬祖列島は台湾に逃げ込んだ蒋介石軍が大陸を取り返すための反攻基地であり、かつ毛沢東軍の侵攻から台湾を守る防御基地でもありました。
平和になった今ではこうしたスローガンも馬祖列島独特の風景として保存され観光名所になっています。
さて島に上陸したらまずは朝食を摂りましょう。港の奥にある白日夢民宿は一階がカフェになっており、馬祖列島らしいご飯を味わえます。
ここでのお勧めは継光餅です。継光餅は馬祖や福州でよく見られるベーグルのようなパンで、馬祖ではネギが入った卵焼きを挟んで食べます。塩気の効いた継光餅とふっくらした卵がよく合います。
腹ごしらえが済んだら観光に出かけましょう。
港からバスかバイクで海沿いの道を行くと巨大な石像が見えます。この像は媽祖巨神像といい、中国南部や台湾で篤く信仰されている媽祖という女神を祀ったものです。
媽祖は航海の女神で、その昔林默娘という女性が航海に出て遭難した父を悲観して海に身を投げ、後に海の守護神になったそうです。
島の裏側、津沙村や牛角村は古い建物が残っていることで有名です。
閩東建築と呼ばれる花崗岩を切り出して積み上げた建物で、瓦の上に石を置いて押さえているのが特徴です。いかにも海辺の町という雰囲気で見ているだけで心が躍ります。
さて、この島の本島の魅力は夜です。夜は娯楽も何も無い真っ暗な島ですが、津沙村の隣の鉄板村で海を眺めてみてください。
漆黒の海ですが、岸に打ち寄せる波が青く光っています。
白い波しぶきではなく、コバルトブルーの輝きです。
これは藍眼淚(青い涙)と呼ばれる現象で、海中の細かい藻類が岸に打ちつけられる刺激で発光しているそうです。
世界でも非常に珍しい現象だそうで、海岸をぐるっと光で囲まれているのを見ると本当にこの島は神様に守られているのだと実感します。
馬祖は海水だけでなく海岸も光ります。津沙村の砂浜を足で踏みしめてください。
一瞬ですが白い粒のような光がたくさん現れます。こちらは星砂といい、蛍のような虫がやはり刺激に反応して発光しているそうです。
砂浜を歩き回ったり軽く掘ったりするとそこに光の足跡が現れるという、とても神秘的な光景です。
様々な光に満ち溢れた伝説の島、馬祖列島。ぜひ皆さんもこの自然の煌めきを自身の目に焼き付けてください。